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特集 ラフトと細胞機能
リピドラフトの動態と細胞骨格
著者: 馬場健1
所属機関: 1山梨大学大学院医学工学総合研究部医学系学域第1解剖学教室
ページ範囲:P.266 - P.271
文献購入ページに移動1. 流動モザイクモデルとラフト仮説の提唱
現在まで一般的に受け入れられてきた細胞膜のイメージは,SingerとNicolson1)による流動モザイクモデルに基づいたものである。細胞膜は二次元的な広がりを持って流動している均質な脂質の海であり,そこに多種多様な膜タンパク質が浮かんでいるというものである。このモデルは広く受け入れられ,その結果,膜タンパク質のみが主な研究の対象となり,膜脂質の研究は取り残されてきた。しかし,現在では細胞膜の脂質は決して均一ではなく,多様な構成からなる膜微小領域(マイクロドメイン)を形成し,それがモザイク状に混在していると考えられている。
リピドラフト2)はこういった多様なマイクロドメインの一種であり,生化学的には界面活性剤に不溶性の軽い分画,detergent-resistant membrane(DRM)をラフト分画として扱うことも多い。しかし,DRMは特定の細胞に特定の処理を加えた結果得られた標品であり,細胞ごと,また研究者ごとに異なる分画をラフトと呼んでいる可能性が高い。また,DRMが生きた細胞でのラフトをそのまま単離できている保証もない。したがって,ラフトは類似した性質をもった多様な膜領域の混合物であり,現段階でははっきりとした定義は与えられないかもしれない。
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