特集 創薬ゲノミクス・創薬プロテオミクス・創薬インフォマティクス
第2部 総説 Ⅰ 創薬ゲノミクス
DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析による薬物の分類
著者:
佐藤陽治1
石田誠一2
所属機関:
1国立医薬品食品衛生研究所遺伝子細胞医薬部
2国立医薬品食品衛生研究所薬理部
ページ範囲:P.399 - P.404
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ヒトをはじめとするゲノムシーケンスプロジェクトの進展とDNAマイクロアレイの登場によって,ゲノムおよびトランスクリプトームの大部分をカバーするまでの網羅的な遺伝子発現解析が可能となりつつある。現在行われている,もしくは考えられている医科学分野におけるDNAマイクロアレイの代表的用途は,主に二つの方向性に分けることができると考えられる(表1)。一つは生体の特性解析を行う方向で,もう一方は生体自身ではなく生体に作用する物質の特性解析を目指す方向であり,DNAマイクロアレイを介した薬物のバイオアッセイと考えることができる。後者は比較的最近試みられるようになったもので,例としては,1)薬物の標的遺伝子の同定とそれに基づく分類,および2)トキシコゲノミクス―化学物質の毒性関連遺伝子の同定とそれに基づくプロファイリング―が挙げられる。1)と2)はその技法として共通する部分も多いが,研究の初段階における焦点を化学物質の薬効に置くか毒性に置くかという点が大きく異なっており,一般的に薬効を示す用量領域は毒性領域よりも低濃度側にあるため,実験計画も実験結果も異なってくる。筆者らは現在,DNAマイクロアレイを応用した核内受容体リガンドの評価法に関する研究を行っている。
本稿では,DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析に基づく薬物の標的遺伝子の同定と分類について,主に筆者らの経験をもとに概説する。