特集 創薬ゲノミクス・創薬プロテオミクス・創薬インフォマティクス
第2部 総説 Ⅳ 創薬への利用
SNPsを用いた関連解析と疾患遺伝子座同定
著者:
柳内和幸1
加藤規弘1
所属機関:
1国立国際医療センター研究所遺伝子診断治療開発研究部
ページ範囲:P.458 - P.462
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ヒトゲノムの遺伝情報は32億の文字(塩基対)の並びで表され,個人間では0.1%程度の違い(すなわちバリエーション)を示すことが知られている。そのようなバリエーションの代表が一塩基多型(single nucleotide polymorphisms;SNPs)であり,全ゲノム中には300万ヵ所以上存在すると推測されている。そのなかに疾患の罹りやすさ(疾患感受性)に関係するものが存在すると考えられ,それらの同定を目指したSNP解析研究が精力的に進められている。疾患の成因・病態を分子(遺伝子)レベルで解明しようという「分子遺伝学」の研究アプローチにより,これまでに多くの単一遺伝子疾患の責任遺伝子が同定されてきた。方法論,解析ツールの目覚ましい進歩とともに,近年,こうした単一遺伝子疾患から多遺伝子疾患,特に高血圧や糖尿病などの「多因子」疾患へと対象疾患が広がりつつある。多因子疾患は,複数の遺伝要因および食事などの環境要因が複雑に関与し合って発症するため,特定の疾患感受性遺伝子の疾病型対立遺伝子(アレル)を持つ個体が実際に発症する確率(浸透率)は単一遺伝子疾患より相当低く,責任遺伝子の同定は容易でない。解析ツールとしてSNPsをいかに活用するかが成否の鍵を握っており,本稿では,SNPsを用いた多因子疾患の研究戦略について概説する。