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文献詳細

雑誌文献

生体の科学54巻5号

2003年10月発行

文献概要

特集 創薬ゲノミクス・創薬プロテオミクス・創薬インフォマティクス 第2部 総説 Ⅳ 創薬への利用

分子ターゲットでのがん治療薬の開発:メシル酸イマチニブ(グリベック®

著者: 都賀稚香1 中島元夫1

所属機関: 1ノバルティス ファーマ(株)筑波研究所

ページ範囲:P.469 - P.476

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 がん治療薬の創薬・開発に臨む場合,まず有効性を念頭に置かなければならない。より高い有効性を見出すためには,がんの発症から病態を把握し,それに対応する創薬・開発コンセプトの確立が必要となってくる。今までの抗がん剤開発を省みると,アルキル化剤を始め,代謝拮抗剤,抗がん性抗生物質,自然界から抽出された抗がん物質のいずれにおいても,細胞増殖抑制をコンセプトとした創薬がなされており,がん病態の特徴である(異常な)細胞増殖に対応した薬剤であった。しかしながら標的とした細胞増殖は,生体の恒常性維持にも必要な事象であったことが,副作用の発現に繋がり,臨床応用を制限した。すなわち,標的事象のがん特異性の低さが,薬効と副作用というコンセプト上のジレンマを生じさせたのである。

 このジレンマを解決したのは,分子生物学的研究の発展であった。標的事象となってきた細胞増殖のさらなる詳細な機序が,分子レベルにまで解明され,がん化の原因分子を特定できるまでに至ったのである。がん細胞に特異的な分子イベントの解明は,新たに対応すべき標的を絞りこみ,がん細胞に特化した薬剤の可能性を提示した。この概念は分子標的と呼ばれ新たな抗がん剤の創薬・開発コンセプトとして広く研究され始めた。本稿では,ノバルティス ファーマ社において分子標的治療薬として開発された慢性骨髄性白血病(CML)治療薬メシル酸イマチニブの開発経緯について概説する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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