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特集 創薬ゲノミクス・創薬プロテオミクス・創薬インフォマティクス 第2部 総説 Ⅳ 創薬への利用
トキシコゲノミクス
著者: 菅野純1
所属機関: 1国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター毒性部
ページ範囲:P.477 - P.481
文献購入ページに移動 ヒトやマウスなどの全ゲノム解読が進みマイクロアレイ技術が進歩した結果,「全遺伝子発現プロファイリング」が,体内での分子レベルの出来事を解明する手段として利用可能となった。毒性学を含む生物学的解析に本手法を用いる場合,今までに蓄積してきた知見を補強する,あるいは,個々の知見のその背景を分子レベルで解明するためには,遺伝子発現変化を何らかの形質(所見)に結びつけようとする方法が採られる。この場合は,有意義な突破口が一つでも見つかれば目的を達したことになる。
これに対して,もう一つの方法は,通常の解析方法(例えば病理組織像)によって形態変化が観測されない状態(時間的,用量的,あるいは生体反応の種類により),あるいは,形態変化とは結びつかない(実験者が予想しないだけなのかもしれないが)状態を網羅的に解析する方法である。この方法では必ずしも明瞭な形質発現が見られなくても,全遺伝子プロファイリングとインフォマティクスを組み合わせることにより,従来の毒性知識に束縛されない形でmRNAの変動という面から生物現象を解析できるという前提に立っている。生物学におけるリバース手法,すなわち,機能が不明であっても遺伝子側から発現形質を求めて行く方策,例えば遺伝子ノックアウトマウスの作製などに見られる手法であるが,この「遺伝子から形質発現」への手順を毒性学に当てはめることが可能となった。毒性所見とリンクする遺伝子変化を追いかけるのではなく,全遺伝子の変動を解析することによって,観測され得る形質を説明しようとするものである。
これに対して,もう一つの方法は,通常の解析方法(例えば病理組織像)によって形態変化が観測されない状態(時間的,用量的,あるいは生体反応の種類により),あるいは,形態変化とは結びつかない(実験者が予想しないだけなのかもしれないが)状態を網羅的に解析する方法である。この方法では必ずしも明瞭な形質発現が見られなくても,全遺伝子プロファイリングとインフォマティクスを組み合わせることにより,従来の毒性知識に束縛されない形でmRNAの変動という面から生物現象を解析できるという前提に立っている。生物学におけるリバース手法,すなわち,機能が不明であっても遺伝子側から発現形質を求めて行く方策,例えば遺伝子ノックアウトマウスの作製などに見られる手法であるが,この「遺伝子から形質発現」への手順を毒性学に当てはめることが可能となった。毒性所見とリンクする遺伝子変化を追いかけるのではなく,全遺伝子の変動を解析することによって,観測され得る形質を説明しようとするものである。
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