文献詳細
特集 オートファジー
文献概要
夕暮れて淡き輪郭
膜という概念の中に人は生まれき
(永田紅“日輪”より)
「電子顕微鏡の生物学における最大の貢献は“生体膜の発見”である」といっても言い過ぎではないであろう。細胞内には複雑な膜系が縦横無尽に発達し,様々な細胞活動を担っている。細胞の膜系がどのようにして形成されるかという問題は,細胞生物学の中心的課題として現在も精力的に研究されている。その中でも,オートファジーは特別の関心を持って研究されてきた。オートファジーは,細胞内に正体不明の膜構造が現れ,未知の機構で細胞質を隔離して分解するという極めて魅惑的な現象である。細胞にとってオートファジーは重要な機能の一つであり,飢餓によって栄養の供給を外部から断たれても,この機構により自らの一部を分解し生命活動に必要な分子を調達することができる。肝細胞のオートファジーが1962年,AshfordとPorter1)により報告されて以来,電顕形態学によってオートファジーの研究が数多くなされた。その努力の結果,ほとんど全ての真核生物でオートファジーという共通の現象が見られることが明らかになった。オートファジーを行う膜の出現機構についても電顕形態学により数多くの研究がなされて様々な説が提出されたが,いまだ決着はついていない。最近,オートファジーに必須の遺伝子群(APG )が同定され,分子細胞生物学を用いてオートファジーを総合的に解析することが可能となりつつある2)。40年にわたる電顕形態学の知識は,遺伝子を中心とする新しい研究方法と融合することにより,オートファジーの研究の推進に大きな力となると考えられる。
膜という概念の中に人は生まれき
(永田紅“日輪”より)
「電子顕微鏡の生物学における最大の貢献は“生体膜の発見”である」といっても言い過ぎではないであろう。細胞内には複雑な膜系が縦横無尽に発達し,様々な細胞活動を担っている。細胞の膜系がどのようにして形成されるかという問題は,細胞生物学の中心的課題として現在も精力的に研究されている。その中でも,オートファジーは特別の関心を持って研究されてきた。オートファジーは,細胞内に正体不明の膜構造が現れ,未知の機構で細胞質を隔離して分解するという極めて魅惑的な現象である。細胞にとってオートファジーは重要な機能の一つであり,飢餓によって栄養の供給を外部から断たれても,この機構により自らの一部を分解し生命活動に必要な分子を調達することができる。肝細胞のオートファジーが1962年,AshfordとPorter1)により報告されて以来,電顕形態学によってオートファジーの研究が数多くなされた。その努力の結果,ほとんど全ての真核生物でオートファジーという共通の現象が見られることが明らかになった。オートファジーを行う膜の出現機構についても電顕形態学により数多くの研究がなされて様々な説が提出されたが,いまだ決着はついていない。最近,オートファジーに必須の遺伝子群(
参考文献
12:198-202, 1962
2)吉森保:蛋白質 核酸 酵素 46:2117-2126,2001
29:365-385, 1997
116:1679-1688, 2003
152:657-668, 2001
19:5720-5728, 2000
27:29-37, 2002
, 2003(in press)
136:61-70, 1997
61:67-80, 1993
11)山本章嗣:医学のあゆみ 200:281-286,2002
110:1935-1945, 1990
11:747-763, 2000
23:33-42, 1998
15)山本章嗣・他:細胞工学 17:597-608,1998
78:152-167, 1978
144:15-24, 1983
38:1571-1581, 1990
(Tokyo) 91:1943-1950, 1982
110:1923-1933, 1990
21)Liou W:Dynamic Aspect of Lysosomal/Vacuolar system(Proceeding of the Symposium), 4-1, 1997
67:139-153, 1980
43:269-277, 1980
20:5971-5981, 2001
278:17636-17645, 2003
543:154-158, 2003
301:1387-1391, 2003
28:195-204, 2003
63:2103-2108, 2003
5:455-468, 2003
31)前田靖男:細胞 3:22-30,1971
108:55-69, 1981
24:83-87, 1983
11:232-245, 1969
333:169-174, 1993
5:539-545, 2003
掲載誌情報