icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻1号

2004年02月発行

文献概要

特集 ニューロンと脳

大脳辺縁系,前頭前野および側坐核と情動行動

著者: 小野武年1 田村了以1

所属機関: 1富山医科薬科大学医学部生理学第二講座

ページ範囲:P.50 - P.59

文献購入ページに移動
 ヒトをはじめ動物は,生得(本能)的または後天(経験や学習)的な欲求を満たしてくれる食物,水,異性の相手など快感や喜び(快情動)を感じるものには近づき手に入れようとし(接近行動:快情動行動),外敵や危険物など不快感や恐れ,怒りや悲しみを感じるものは排除または回避しようとする(攻撃または逃避行動:不快情動行動)。これら快・不快情動行動を起こすに至る脳内過程を快・不快情動と呼ぶ。ヒトや動物は,情動(生物学的価値評価と意味認知)によって,行為対象が自分にとって報酬なのか罰なのかをすばやく判断して,外界の状況に応じた臨機応変の行動を実践する。また,過去の体験や記憶は将来の類似した状況下でより有利な行動戦略を選ぶのに役立つ。これまでの研究により,大脳辺縁系,とくにその二大神経構造である扁桃体と海馬体がそれぞれ情動および記憶に,また,前頭前野は意欲の持続,推論,意思決定などに重要な役割を果たしている。さらに,これら扁桃体,海馬体,前頭前野などの脳領域からの情報が収束し,腹側被蓋野から密なドパミン作動性入力を受ける側坐核は,誘因動機づけや報酬予測などに役割を果たすと考えられている。

 本稿ではこれら脳領域のうち,まず,大脳辺縁系(扁桃体と海馬体)および前頭前野の役割について,筆者らがこれまでサルを用いて行ってきたニューロンレベルの研究について述べる。ついで,腹側被蓋野-側坐核(中脳辺縁ドパミン)系の快情動行動における役割について概説し,最近筆者らが行っている,ドパミンD2またはD1受容体ノックアウトのマウス側坐核ニューロン報酬予測応答や行動などへの影響に関する最新知見を紹介する。

参考文献

256:80-89, 1987
42:979-1000, 1939
3)Gloor P:Handbook of Physiology, Section 1:Neurophysiology, Vol 2, pp1395-1420, American Physiology Society, Washington, 1960
47:173-178, 1954
8:3556-3569, 1988
8:3570-3583, 1988
67:1447-1463, 1992
253:1380-1386, 1991
20:11-21, 1957
10:3106-3117, 1990
2:287-306, 1992
311:323-332, 1984
382:629-632, 1996
5:39-87, 1978
28:309-369, 1998
56:265-272, 1997
17)Fibiger HC, Phillips AG:Handbook of Physiology, The Nervous System 4, pp 647-675, American Physiology Society, Washington, 1986
13:900-913, 1993
16:1936-1947, 1996
99:8986-8991, 2002
21)Tran AH, Tamura R, Uwano T et al:Cognition and Emotion in the Brain, pp493-508, Elsevier, Amsterdam, 2003
22)小野武年:岩波講座 認知科学6―情動,pp109-142,岩波書店,東京,1994

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?