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特集 アダプタータンパク
軸索ガイダンスに関与するアダプター関連分子
著者: 根岸学1 加藤裕教1
所属機関: 1京都大学大学院生命科学研究科生体システム学分野
ページ範囲:P.111 - P.117
文献購入ページに移動 学習や記憶などの複雑な脳機能を可能にしているのは,神経細胞が神経突起をのばし,互いに接着することにより形成される複雑な神経回路の存在による。通常,神経細胞は細胞体から1本の軸索と複数の樹状突起を伸長する。軸索は様々な軸索ガイダンス分子に導かれて伸長し,目的のターゲット細胞に到達し,シナプスを形成し,複雑な神経回路を形作る。この神経回路網の基本構造はかなり正確で厳密にできており,それを可能にしているのは軸索ガイダンス分子の誘導作用によるものである。現在までに様々な軸索ガイダンス分子が発見されており,細胞膜に結合した分子もあれば細胞外に分泌される分子もある。ガイダンス分子は,そのガイダンス作用から大きく分けて二つのグループに分けられる。一つは軸索に対し反発作用を示す分子で,semaphorinファミリーやephrinファミリーがある。他方は誘因作用を示すもので,netrinなどがそれに当たる。しかし,例えばnetrinはその受容体の種類により誘因作用を示したり,反発作用を発揮したりと,ガイダンス因子の作用は状況によって複雑に変化する。軸索ガイダンス分子は細胞膜上のそれぞれに特異的な受容体に結合し,神経細胞内にシグナルを伝達するが,現在までに様々なガイダンス分子の受容体がクローニングされ,その分子構造が明らかにされてきた。さらに,その受容体を介した細胞内への情報伝達機構について,近年精力的に研究が進められており,受容体の神経細胞内領域に結合する様々な機能分子が同定され,ガイダンス作用における役割が徐々にわかってきた。ここでは,それらの分子をガイダンス分子ごとにまとめて紹介する。
参考文献
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