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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻2号

2004年04月発行

文献概要

特集 アダプタータンパク

イオンチャネルと結合するアンカリングタンパクAKAPの役割

著者: 東田陽博1 星直人1 横山茂1

所属機関: 1金沢大学大学院医学系研究科脳分子細胞学大講座脳細胞遺伝子学研究分野

ページ範囲:P.129 - P.132

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 細胞の中でサイクリックAMP(cAMP)とcAMP依存性タンパク質リン酸化酵素(A-キナーゼ)の関与する経路と,イノシトール三リン酸(IP3)とジアシルグリセロール(DAG)をセカンドメッセンジャーとするタンパク質リン酸化酵素(C-キナーゼ)の関与する細胞内シグナル伝達経路は双璧である。歴史的には,サザランドによるcAMPの発見は直ちにクレブスとフイッシャーやグリンガードによる,A-キナーゼによるタンパク質のセリンやスレオニン残基をリン酸化する発見になった1)。なかんずく,特定のタンパク質1個をリン酸化するのみでなくリン酸化によるリレーにより,いい換えるとシグナル連鎖(カスケード)により信号が伝達されることも示された。ホスホリパーゼCにより生じるIP3やDAGはベリジや西塚により見出され,それぞれ,細胞内カルシウム貯蔵サイトからのカルシウム動員をはかり細胞質のカルシウム濃度を高めるとともに,C-キナーゼを活性化する2)。C-キナーゼもタンパク質のセリンやスレオニン残基をリン酸化する。A-キナーゼやC-キナーゼは相当広範な多くのタンパク質を基質とし,それらをリン酸化する。

 ホルモンやニューロトランスミッターによる刺激を,広範なターゲットスペクトルムを持つこのようなキナーゼがセカンドメッセンジャーとして,どのようにして細胞の特定のタンパク質をリン酸化し,定まった細胞機能を活性化できるのかは長らく不明のままであった。この問題にチャレンジし解決したのは,米国ワシントン州シアトルのワシントン大学でクレブスの下で博士取得後の研究をし,NaやCaイオンチャネルの研究で知られるカテラルの下で過ごした,オレゴン州ポートランドのオレゴン健康科学大学のボラム研究所教授のジョン ・ スコットである3)。彼は,キナーゼを繋留するタンパク質(A-kinase anchoring protein;AKAP)を見出した(図1左)。AKAPは細胞の特定の場所に局在し,その近傍とターゲットタンパク質をAKAPに繋留されたA-キナーゼでリン酸化する。さらに,AKAPはターゲットタンパク質に結合することにより,決められた単一のタンパク質のリン酸化を行うこともできる。そのことは,とりもなおさず,リン酸化する対象を制限し,不特定多数に信号が伝わらなくする機能も持ち合わせている。信号伝達の正確さに貢献している。

参考文献

1)Greengard P:Science 294:1024-1030, 2001
4:517-529, 2003
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323:333-335, 1986
335:355-358, 1988
35:507-520, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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