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特集 分子進化学の現在
共生という生き方の帰結―微生物ゲノム解析からの洞察
著者: 深津武馬1 石川統2
所属機関: 1産業技術総合研究所生物機能工学研究部門生物共生相互作用研究グループ 2放送大学自然の理解専攻
ページ範囲:P.217 - P.225
文献購入ページに移動アブラムシ類は世界中で4000種以上が知られ,一生を通じて植物の汁液のみを餌とする吸汁性昆虫である。植物の師管液にはショ糖が多量に含まれるが,タンパク質や脂質はほとんど存在しない。窒素源としてはある程度の量のアミノ酸が含まれるが,その組成は大きく偏っており,必須アミノ酸の含量が低いために,普通の動物にとっては利用困難である。しかしアブラムシ類はこのような栄養的に難しい食物資源の利用に特化して,温帯域でもっとも重要な農業害虫の一つとなるほどの繁栄を実現している。その秘密は,アブラムシの体の中に存在するミクロの共生系にある。
アブラムシの体内には菌細胞(mycetocytes, bacteriocytes)と呼ばれる巨大細胞が存在し,その細胞質の中に無数の球状の細菌が共生している(図1)。この共生細菌は,大腸菌などに近縁のγプロテオバクテリアに属しており,
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