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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻3号

2004年06月発行

実験講座

トマトレクチンを用いた血管三次元イメージング法

著者: 森川俊一1 江崎太一1

所属機関: 1東京女子医科大学解剖学発生生物学講座

ページ範囲:P.266 - P.272

文献概要

 レクチン(lectin)とは特定の糖鎖と極めて選択的に(特異的に)結合するタンパクの総称であり,細菌・植物・動物を問わず広く生物中にみとめられる。現在,レクチンは医学生物学研究において非常に有用な道具となっており,その用途は糖タンパクや糖ペプチドの分類・確認にとどまらず,細胞分化の研究,神経細胞経路の追跡,細菌種の決定,骨髄移植時のリンパ球と骨髄の分画,腫瘍の悪性化と転移の診断など,基礎研究から臨床への応用まで幅広く多岐にわたる1)

 さて,われわれの研究室では炎症および腫瘍組織における血管新生のメカニズムの解明をテーマの一つに研究を行ってきている。血管の新生・再構築機序の解明にはin situでの観察が重要であり,かつ複雑なネットワーク構造の把握のために鮮明な三次元画像を得る手法が望まれるが,われわれはレクチンを動物の血管系に流し込み,血流にのせて血管内皮細胞表面の糖衣に結合させることによりin situで血管を可視化して共焦点レーザー顕微鏡で観察を行うという方法を用いている。これは筆者らが客員研究員として在籍したUniversity of California, San Francisco(UCSF),Cardiovascular Research Institute,Donald M. McDonald Laboratoryで開発された方法である。血流のあるところであれば非常に細かな毛細血管でもまんべんなく鮮明に描出することが可能であるという点と,血管そのものを内腔側から描出するという点で,厚切り切片上の免疫組織化学染色で発生するいくつかの問題,すなわち,切片深部まで抗体が浸透しづらいこと,あるいはバックグラウンド染色が強くなる場合などの問題を排除することができる理想的な手法である2-4)。本稿ではこのレクチンによる血管三次元イメージングの具体的手法について紹介する。

参考文献

1)ナタン・シャロン,ハリナ・リス:レクチン,大沢利昭・小浪悠紀子(訳),学会出版センター,東京,1992
271:H2547-H2562, 1996
158:2043-2055, 2001
3:985-1000, 2002
116:349-359, 2001
95:261-268, 1998
25:726-734, 1993
72:445-452, 1995
236:779-784, 1998
86:603-607, 1987

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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