icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻4号

2004年08月発行

文献概要

解説

メタボローム研究をどうすすめるか

著者: 田口良1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻メタボローム寄付講座

ページ範囲:P.360 - P.367

文献購入ページに移動
 メタボロームmetabolomeとは特定の環境下における生体や細胞の代謝分子の総体を意味し,この解析を目指す学問分野はメタボロミクスmetabolomicsと呼ばれている。メタボローム解析はポストゲノム研究の重要な課題であるタンパク質の機能解析において,ゲノム,プロテオーム解析とともに,欠かすことができないものと考えられ始めている。今後,メタボローム解析と,それに関与するトランスクリプトーム解析,プロテオーム解析を対応させて位置づけることにより,詳細な代謝パスウェイの解明が可能になると予想される。

 このメタボロームに関連する研究においては,質量分析法(MS)がその解析手段として極めて有効であることがわかってきた。さらに,2002年のノーベル賞の対象になったエレクトロスプレーイオン化(ESI)やマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)などのソフトイオン化法の出現と共に,MSの利用方法に一種のパラダイム変換が起ころうとしている。つまり,MSによる分析手法が特定の生理的現象の背後に関与する生体分子を推定する目的で用いられるようになってきた。この解析の特徴はある遺伝子,または生理的,病理的環境などの特定要因の異なった複数の系における,多数の構成分子を網羅的に分析し,そのプロファイルを比較することにより,最も可能性の高い因子を探り出すという考え方に立っている。

参考文献

50:116-125, 2002
2)シービオクTA,コミカー=シービオクJ:シャーロックホームズの記号論―C. S. パースとホームズの比較研究,岩波書店,東京,1994
35:953-966, 2000
4)原田健一,田口良,橋本豊(編):生命科学のための最新マススペクトロメトリー,講談社サイエンティフィク,pp214-230,講談社,東京,2002
1532:223-233, 2001
65:2185-2191, 1999
276:29664-29670, 2001
277:34254-34263, 2002
277:44507-44512, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?