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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

文献概要

特集 生命科学のNew Key Word 1.遺伝子/遺伝子発現/進化

SARAとSki―TGF-βシグナル伝達の新たな調節分子群

著者: 田中伸幸1

所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科免疫学

ページ範囲:P.376 - P.377

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 TGF-β(transforming growth factor-β)はBMPおよびActivin/nodalとともにサイトカインスーパーファミリー分子群を形成し,発がんおよび増殖分化調節,アポトーシスのみならず初期発生や免疫調節に重要な役割を果たしている。これらのサイトカインは,セリン/スレオニンキナーゼであるtype Ⅱ受容体を活性化し,さらにtype Ⅰ受容体のセリン/スレオニンキナーゼ活性を上昇させシグナル伝達を行う。受容体キナーゼにより活性化し下流にシグナルを伝達する分子としてSmadがよく知られている1)。Smad分子群は特異的Smad(R-Smad;Smad1,2,3,5,8),共有型Smad(Co-Smad;Smad4)および抑制性Smad(I-Smad;Smad6,7)の3種の機能的分類がなされている。TGF-βシグナルにおいては,R-SmadのうちSmad2がtype Ⅰ受容体のターゲットとしてリン酸化にされ,最終的に核内においてCo-SmadであるSmad4と複合体を形成し,標的遺伝子のプロモーターに結合し転写活性化を惹起する。しかしながらSmad2の細胞質局在,特に受容体近傍へのリクルートのメカニズムは不明であった。

 こうしたなかでSmad2を細胞質にアンカリングする分子として同定されたのがSARA(Smad anchor for receptor activation)である。SARAはFYVEドメイン(conserved in Fab1p/YOTB/Vac1p/EEA1)を持ちPhosphatidilinositol-3-Phosphateを介して細胞膜に結合するとともにSmad2とも結合し,Smad2をTGF-β受容体複合体にリクルートする2)。最近になって,TGF-β受容体はリガンド結合後,細胞内小胞に取り込まれ継続してシグナル伝達を行う一方,ライソゾーム系により分解されることが判明した3)。前者はClathrin依存性の細胞内取り込みを経てEEA1陽性細胞内小胞に内包されるが,この小胞においてSARAがSmad2をリクルートしシグナル伝達を細胞内で継続させていた。一方で,Caveolin陽性小胞に取り込まれたTGF-β受容体は分解経路に乗るようであるが,その分子メカニズムは不明である。SARAと同様にFYVEドメインを持つHrsはSARAと協調してSmad2を受容体にリクルートする4)。ショウジョウバエにおいてHrs欠損細胞では受容体のダウンレギュレーション障害に基づいて種々のシグナル伝達が亢進することが認められていることから,Clathrin/Caveolin陽性小胞とHrsの関係が今後注目される。

参考文献

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278:38998-39005, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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