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特集 生命科学のNew Key Word 2.核/染色体
バウンダリーエレメント
著者: 石井浩二郎12
所属機関: 1久留米大学分子生命科学研究所細胞工学研究部門 2科学技術振興機構さきがけ研究
ページ範囲:P.398 - P.399
文献購入ページに移動長大なるゲノムDNAは,核内で多様なタンパク質との高次複合体「クロマチン(chromatin;染色体)」を形成することで,高度な折り畳みによる秩序だった収納と,細胞分裂を通じた安定な継承・維持を達成している。染色体DNAの折り畳みにはヒストンタンパク質への巻きつきを基本単位とした複数の高次中間段階が介在しているが,その状態は外的シグナルなどに応じて動的に変遷し得るものであり,染色体折り畳み度は遺伝子発現レベルと相関関係を示す。しかしながら,1本の染色体に含まれたゲノムDNA上には多数の遺伝子が存在するため,単一のクロマチン分子内にも異なる折り畳みレベルのクロマチン構造が接しあいながら混在することになる。バウンダリーエレメントはこれら染色体上のクロマチン構造領域の境界を規定し,隣り合って互いに干渉しあう可能性のある動的クロマチン変換効果の伝播を部位特異的に遮断する機能を果たす。バウンダリーエレメントは,特にその遺伝子発現に与える影響に着目した場合,エンハンサーやサイレンサーなどの転写制御要素と混同しやすいが,バウンダリーエレメントは自らの部位を越えて伝播しようとするクロマチン変換効果は遮断するが(図1 ① の効果),自分自身を横切らない効果に対してはそれが近接する因子に由来していても全く影響を与えない点(図1 ② の効果)で上述の転写制御要素と一線を画する。
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