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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

文献概要

特集 生命科学のNew Key Word 2.核/染色体

BAF―低分子量DNA結合タンパク

著者: 古川和広1 襲田真一1 堀米恒好1

所属機関: 1新潟大学理学部生化学講座

ページ範囲:P.400 - P.401

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 BAF(Barrier-to-autointegration factor)は1998年に遺伝子がクローニングされた分子であり1),約90アミノ酸から成る分子量10kDの低分子量DNA結合タンパク質で,これまでのところ多細胞動物にのみ存在が確認されている。BAFは,白血病ウイルスやエイズウイルスなどのレトロウイルスが宿主細胞に感染後に形成するプレインテグレーション複合体を構成する宿主細胞性由来の因子として見つかった分子である。in vitroではBAFは逆転写により形成されたウイルスDNAに結合し,ウイルスDNA間でインテグレーションが起こること(autointegration)を阻害する活性を持つことが明らかになっており,これがBarrier-to-autointegration factorと命名された所以である1)

 また,BAFにはウイルスゲノムを宿主ゲノムへインテグレーションさせるインテグレースを活性化する機能もある。その活性化能力は,これまで見つかっている同様な機能を持つ細胞性のタンパク質HMG A1(high-mobility group protein A1)より500倍以上高いことも知られている2)。BAFはタンパク質の構造内にhelix-hairpin-helix構造を持ち,塩基配列には依存せず2本鎖DNAに特異的に結合する特性がある。水溶液中では,ダイマーを形成し異なる2本鎖DNA間を架橋する機能が強く,21塩基対のDNAを用いた解析ではドデカマーの大きな複合体を形成することが示されている3)。宿主細胞性由来の因子であるBAFが,どうしてこのようにレトロウイルスの増殖に寄与するかについてはまだ詳細は明らかではない。

参考文献

95:1528-1533, 1998
95:15270-15274, 1998
97:8997-9002, 2000
112:2485-2492, 1999
158:475-485, 2002
116:3811-3823, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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