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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

文献概要

特集 生命科学のNew Key Word 3.細胞周期/細胞分裂

チェックポイントコントロール

著者: 正井久雄1

所属機関: 1東京都臨床医学総合研究所細胞生物学研究部門

ページ範囲:P.404 - P.405

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 チェックポイント(Checkpoint)という言葉は,1988年にWeinertとHartwellにより初めて使われた。野生型の出芽酵母はX線によるDNA損傷が与えられると,G2期に停止して,損傷を修復し,その後増殖を再開する。彼らはrad9変異株に同様なDNA損傷を与えると,この変異体は増殖を停止せずそのまま数世代分裂を続けやがて死んでしまうことを見出した。この結果から,彼らは,酵母細胞はDNA損傷を感知し,それが修復されることを確認するまで増殖を一旦停止させる監視システムを有していると提唱し,この監視点をRad9チェックポイントと名付けた。その後の研究から,細胞は細胞周期の種々のポイントに同様な監視点-チェックポイント-を備えていることが明らかになり,チェックポイントコントロールは以下に記すように,細胞周期の進行を監視する制御システムという広い意味で使用されるようになった。

 細胞周期は,二つの間期をはさんでDNA複製と細胞分裂が秩序正しく繰り返される現象である。また,二つのイベントは相互に依存しており,それぞれが完全に誤りなく終了しないと,次のイベントの正しい進行は保証されない。たとえば,DNA複製が完全に終了する前に細胞分裂が進行すると,当然生じる娘細胞のいずれかは,完全なセットのDNAを引き継げなくなり,結果として細胞の増殖に重篤な影響がでると考えられる。チェックポイントコントロールとは,このようなことが起こらないように,細胞周期の種々の連続的なイベントがそれぞれ完全に終了したことを確認してから次のイベントに移行することを保証する機構である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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