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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

文献概要

特集 生命科学のNew Key Word 4.細胞小器官

小胞体ストレス応答(UPR)

著者: 河野憲二1

所属機関: 1奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター

ページ範囲:P.414 - P.415

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 小胞体は膜タンパク質や分泌タンパク質の合成を行うだけでなく,それらのタンパク質のフォールディング(折り畳み)や品質管理を行う場としても重要な機能をになっている。小胞体で合成されたタンパク質のフォールディング異常を引き起こすようなストレスを総称して「小胞体ストレス」と呼んでいる。細胞に小胞体ストレスがかかると,細胞はその異常を鋭敏に察知し,その恒常性を保つために小胞体ストレス応答(またはunfolded protein response:UPRともいう)を示す1)。この小胞体ストレス応答は,これまでの研究により主に三つの経路,すなわち1)タンパク質合成の抑制,2)小胞体シャペロン遺伝子群の転写レベルでの誘導,3)小胞体関連分解(ER associated protein degradation:ERAD),からなることがわかっており,いずれも小胞体内腔からサイトゾルや核への新しい情報伝達経路により活性化される2)(図1参照)。

 一つ目のタンパク質合成の抑制は,小胞体膜貫通型タンパク質キナーゼPERK(PKR-like ER kinase)の活性化によりeIF2α(eukaryotic initiation factor 2α)がリン酸化され非活性型となり,タンパク質合成が抑制されることにより一過的に新生タンパク質の小胞体内への流入が抑制されるもので,小胞体ストレスに呼応し初期段階で起こる応答である3)。このタンパク質合成の抑制により逆に翻訳が誘導されるATF4(activating trans-cription factor 4)と呼ばれる転写因子があり,この活性化によりアミノ酸代謝や輸送,細胞内酸化還元反応に関与する遺伝子の転写誘導がかかることが知られている。翻訳抑制にはIRE1βという膜貫通タンパク質による28S rRNAの分解によるタンパク質合成の抑制も報告されている4)

参考文献

332:462-464, 1998
101:451-454, 2000
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4:265-271, 2003
412:300-307, 2001
10:98-102, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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