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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

文献概要

特集 生命科学のNew Key Word 7.組織

上皮-リンパ共生

著者: 磯村源蔵1 酒井一由1

所属機関: 1藤田保健衛生大学短期大学解剖学教室

ページ範囲:P.454 - P.455

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 上皮-リンパ共生とは消化管入口の口峡にある扁桃の粘膜表面で見られる現象で,角化しない重層扁平上皮細胞の間に炎症が起こらないのにリンパ球が多数浸潤している状態をいう。唾液小体を観察していたStöhr1)が,ウサギ,ネコ,ハリネズミ,モグラ,コウモリの扁桃上皮の中を多量のリンパ球が口腔へ出るのを記載したのが始まりである。

 扁桃は粘膜下組織におけるリンパ小節の集合をいうが,Fioretti2)は前述の上皮-リンパ共生,リンパ小節の集合,陰窩の存在,他組織と区別できる結合組織性被膜を周辺に有することの4点を備えることを扁桃の定義とした。扁桃の作用は口腔や鼻腔から進入する外来の異物に対する免疫機能や,細菌の進入阻止を中心とした防御的作用を果すことである3)。これは一般的な扁桃の記載であり,著者たちが扱っている実験動物スンクス(Suncus murinus)は口蓋扁桃のほかに消化管出口の肛門部周辺に肛門扁桃,膣扁桃および尿道扁桃4)を有していて,Waldeyerのリンパ咽頭輪に匹敵する構造である。口蓋扁桃とあわせてこれら肛門扁桃,膣扁桃,尿道扁桃で観察された上皮-リンパ共生について記載する。

参考文献

2:368-370,1882
2)Fioretti A:KapitelⅢ. Mikroskopische Anatomie der Gaumentonsille. In:Gaumenmandel, pp 35-83, Die Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1961
3)形浦昭克(編):扁桃―50のQ & A,南山堂,東京,1988
178:251-258, 1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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