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特集 生命科学のNew Key Word 9.脳の遺伝子・分子/細胞過程
脳型脂肪酸結合タンパク
著者: 大和田祐二1
所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科細胞組織学分野
ページ範囲:P.488 - P.489
文献購入ページに移動B-FABPは神経系ではアストロサイトや放射状グリアなどのグリア系細胞に主に発現し,放射状グリアにおける発現は神経細胞の分化や移動に緊密な関連をしめすことから,B-FABPが神経系細胞の分化や移動に必要な長鎖多価不飽和脂肪酸の貯蓄や供給などに関わる制御分子として機能することが想定されている4-6)。Fengらは,小脳の培養放射状グリア細胞において,B-FABPの抗体投与によりグリアの突起伸張が抑制されたことを報告している4)。一方,シュワン細胞においては,坐骨神経の圧挫時に発現の増強がみられ,B-FABP抗体投与により培養シュワン細胞の突起伸張が促進されることが示されている7)。また,ヒトのグリオーマにおけるB-FABPの発現はGFAPの発現とよく一致し,より高分化型の腫瘍に発現していることが示されている8)。以上より,B-FABPはグリア系細胞の突起の伸展を含めた分化過程の制御に関与していることが示唆されているが,放射状グリアとシュワン細胞で,なぜ全く逆の反応が見られるのかなど,その詳細な機序解明については今後の検討が待たれる。また神経系以外では,肝臓のクッパー細胞9)や乳腺上皮細胞10)に発現していることが明らかになっているが,その生理的意義については不明な点が多い。
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