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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

文献概要

特集 生命科学のNew Key Word 9.脳の遺伝子・分子/細胞過程

lot細胞―嗅球軸索をガイドする神経細胞

著者: 平田たつみ1 川崎能彦1

所属機関: 1国立遺伝学研究所脳機能研究部門

ページ範囲:P.494 - P.495

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 発生時,神経細胞の軸索は,特定の道筋を正確に選んで伸長する。これは伸長経路に道標となる信号があるからである。lot細胞は嗅球の軸索の道標となる細胞である1)。われわれが作製したモノクローナル抗体lot1により,特異的に認識されることから発見された。嗅球は脳の吻側端にある構造で,ここの神経細胞の軸索は脳の後に向かって伸長し,嗅索(Lateral Olfactory Tract:LOT)とよばれる軸索の束を形成する2)。lot細胞は,この軸索が伸長するに先立って,将来嗅索が形成される位置に帯状に配列して,嗅球軸索をこの位置へと誘導する(図1A)。lot細胞を破壊すると,嗅球軸索は道に迷ったかのように伸長を停止することから,この細胞が何らかのシグナルを出して嗅球軸索をガイドしていると考えられる1)。しかし,その分子的実体は未だ不明である。

 神経系のいくつかの領域で,同じような道標的機能を果たす細胞が見つかっている3-5)。したがって,早く生まれた細胞が後続軸索をガイドするという現象は,神経系においてかなり一般的であるらしい。lot細胞を含めてこのような道標細胞の多くは神経細胞として分類されている。しかし,発生期のみに一過的に存在する例も多く3),発生期の軸索ガイダンスという特殊な機能を担うためだけに特化した細胞である可能性がある。

参考文献

18:7800-7810, 1998
29:127-137, 1996
347:179-181, 1990
269:98-101, 1995
385:70-74, 1997
20:5802-5812, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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