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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

文献概要

特集 生命科学のNew Key Word 9.脳の遺伝子・分子/細胞過程

Turing波(反応拡散波)

著者: 近藤滋1

所属機関: 1理化学研究所発生・再生科学総合研究センター位置情報研究チーム

ページ範囲:P.498 - P.499

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 動物の皮膚に縞や斑点模様を作るための位置情報を担っていると考えられている反応系(Turing systemまたは反応拡散系)によって生じる繰り返しパターン。

 Turing(1912-54)はイギリスの数学者で,Von Neumannとともに現代のコンピュータ科学の基礎を築いた。また,第2次大戦の時,イギリス軍の暗号電報解読チーム「ウルトラ」を率いて,ドイツ軍のエニグマ暗号を解読し,Uボートの撃退に大きな役割を果たした。この事実は,20年間軍事機密になっていたため,長い間一般には知られていなかったが,最近映画化され有名になった。54年に青酸カリを塗った林檎を食べ,謎の自殺を遂げる。マッキントッシュのLOGOの林檎マークの右下が欠けているのは,あれがTuringのかじった林檎(マッキントッシュは林檎の品種名)であることを示すため。元来数学・情報科学者であったTuringは,52年に「形態形成の化学的基礎」というタイトルの論文の中で動物胚の発生の原理について考察しており,その中で彼の出した答えがTuring波(反応拡散波)である。

参考文献

376:765-768, 1995
2)Kondo S:細胞工学 15:817-824,1996
3)Kondo S:生物物理学とはなにか,シリーズ・ニューバイオフィジックスⅡ-10,共立出版,東京,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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