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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

文献概要

特集 生命科学のNew Key Word 10.脳の働くメカニズムとその研究方法

大脳の大紡錘形細胞―ヒトと高等霊長類にしかない神経細胞

著者: 伊藤正男1

所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター

ページ範囲:P.506 - P.507

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 脊椎動物のヒトへの進化は,脳の拡大,特に大脳皮質の拡張を伴い,これが脳の働きの進歩をもたらした。たとえば,キツネザルのような原猿類と比べるとヒトの大脳は数百倍も大きい。これによって,神経細胞が著しく増加し,そういう量的な変化が機能の進歩という質的な変化を起こしたものと理解されている。特別に違った細胞がヒトの脳に生まれたという考え方をとる人は少ない。

 しかし一方,19世紀終わり,W. BetzやRamón y Cajalの時代から,ヒトの大脳の一部に特別に大きい紡錘形の神経細胞があることが知られていた。Nimchinskyら1)が最近行った詳しい研究によると,この大紡錘形細胞は帯状回前部(ブロードマンの24領域)に特に多くみられ,ボノボではヒトと同様頻繁に,チンパンジーでも頻繁にみられるが,ゴリラでは数が少なくなり,オランウータンではさらに少ない。手長ザルをはじめ,新世界,旧世界ザルにはみられない。従って,この大紡錘形細胞が,脳の進化がヒトにごく近づいた1500万年から2000万年ぐらい昔に出現した特殊な神経細胞である可能性が指摘される。

参考文献

96:5268-5273, 1999
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307:139-142, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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