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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

文献概要

特集 生命科学のNew Key Word 10.脳の働くメカニズムとその研究方法

内部モデル制御

著者: 木村英紀1

所属機関: 1理化学研究所バイオ・ミメティックコントロール研究センター生物制御システム研究チーム

ページ範囲:P.510 - P.511

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運動制御とモデル

 指先を見ながらそれを鼻の頭に持っていくことは視覚のフィードバックを用いた運動制御である。ところが同じことを目を閉じても難なく行うことができる。これが可能であるのは脳内に筋肉のダイナミックスが何らかの形で表現され記憶されているからであろう。ダイナミックスの表現は制御工学ではモデルと呼ばれている。脳による運動制御では,脳内に構築された四肢や環境のモデルが重要な役割を演じているという仮説は,現在では多くの脳生理学や運動生理学の研究者が支持している。

 モデルが運動制御で重要な役割を演じているという主張は,脳神経系がその信号伝達に長い遅れ時間を必要とするという事実を考えるとより強い説得力をもつ。信号伝達に大きな時間遅れを伴うシステムをフィードバック制御することは大変難しく,ゲインをあげると発振してしまう。すばやい巧みな運動制御を実現するには,先手で対策を打てるフィードフォワード制御がどうしても必要であり,そのためには制御対象のモデルが必要となる。

参考文献

1)Morari M, Zafiriou E:Robust Process Control, Prentice-Hall, Englewood Cliffs, NJ, 1989
2)伊藤正男:ニューロンの生理学,岩波書店,東京,1972
3)川人光男:脳の計算理論,産業図書,東京,1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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