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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻5号

2004年10月発行

特集 生命科学のNew Key Word

10.脳の働くメカニズムとその研究方法

意識関連ニューロン活動

著者: 田中啓治1

所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター

ページ範囲:P.514 - P.516

文献概要

 CrickとKoch1)は,視覚および認知が意識的になるのは目の前の状況に対して統一した理解を作り行動をひとつにするためであると考えた。行動における競合を避けるためには感覚入力の統一的理解が必要であり,これこそが知覚における意識の機能上の起源であるという論理である。さらにCrickとKochは,意識が行動の統一のためにあるのなら,意識的知覚に対応する細胞活動は行動の指令を発する前頭葉,特に行動の認知的制御をする前頭前野(前頭連合野とも呼ぶ)に向かって直接出力を送る脳部位に限局されると論理を進めた。物体視経路についていえば,最終ステージである下側頭葉皮質からは前頭前野への強い結合があるが,経路の始まりである第一次視覚野から前頭葉への結合はない。CrickとKochの予想に一致するいくつかの実験結果が,1990年代後半に報告された。(Kochら2)はその後考えをやや修正し,前頭前野とともに注意の制御に重要な役割を果たす頭頂連合野が意識的な知覚に重要な役割を果たし,これらの領野から高次感覚野へのフィードバック結合によって特定の入力刺激の表象が選択的に活性化されて意識的知覚の対象になると提案した。)

 立体視の心理実験やデモによく使われるランダムドットステレオグラムでは,左右の目で点のコントラストを逆にする(左目で白点が右目で黒点,左目で黒点が右目で白点)と視差による刺激の知覚が成立しないことが知られている。CummingとParker3)は,このような左右眼刺激間でコントラストが逆相関する刺激に対して,サルの第一次視覚野の神経細胞が反応することを見出した。第一次視覚野の細胞が刺激に対応して活動するのに個体は刺激を知覚しないのであるから,この実験結果は第一次視覚野の細胞活動が意識的知覚に十分でないことを示している。

参考文献

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21:1698-1709, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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