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特集 生命科学のNew Key Word 12.病気
統合失調症のグルタミン酸仮説
著者: 西川徹1
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院精神行動医科学分野
ページ範囲:P.544 - P.545
文献購入ページに移動現在は,次のような根拠により,統合失調症では少なくともNMDA受容体を介するGlu伝達の低下があると推測されている4,5):(1)PCPを使用したヒトで麻酔作用や意識障害が見られずに統合失調症様の精神症状だけが出現する時の血液中PCP濃度は極めて低く,NMDA受容体以外の神経伝達系には作用しない,(2)PCPだけでなくNMDA受容体遮断作用を持つ薬物は共通して統合失調症の既往のないヒトに本症と類似した症状を誘導し,その力価はNMDA受容体遮断作用と正の相関を示す(特にケタミンの立体異性体間では,NMDA受容体に対する親和性の高いS体の方が,低親和性のR体より健常者に統合失調症様の精神異常を惹起する作用がはるかに強い),(3)健常者には精神異常を惹起しない程度の少量のPCPやケタミンが,統合失調症患者の基底にある症状を増悪させる,(4)NMDA受容体機能を促進する薬物が統合失調症状を改善する(後述)。
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