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文献詳細

雑誌文献

生体の科学55巻6号

2004年12月発行

文献概要

解説

自閉症の病因と病態

著者: 瀬川昌也1

所属機関: 1瀬川小児神経学クリニック

ページ範囲:P.641 - P.646

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 自閉症は記憶機能,言語,母子関係を含む社会性および情緒の障害を示す広汎性発達性障害である。遺伝的要因が示唆されているが,原因遺伝子は同定されていない。自閉症の主症状を何に置くか諸家により意見の相違があるが,病態に視床・皮質結合の異常,皮質の脱抑制,覚醒刺激系の障害が関与していることは諸家の認めるところである1)。さらに,初期徴候が乳児期早期4ヵ月までに発現し,その後特有の徴候が年齢依存性に発現すること, これらの症状の多くは環境要因に左右されること,男性優位の性差を持つこと,などを特徴とすることは意見の一致をみている2)

 これは,自閉症の病因となるニューロンあるいは神経系は,乳児期早期にすでにあるレベル以上に形態的,機能的に発達しており,中枢神経系の下位から上位へ階層的に配列された神経系を並列的に支配し,その機能の発達の制御を行い,かつその活性が環境に左右され,男性優位の易罹患性を持つものであることを示す。筆者はこれを脳幹セロトニン(5HT)神経系と考えている。しかし,自閉症には5HT神経系の異常では説明できない徴候もあり,またその神経病理は,前脳辺縁系と小脳の発達障害による固定的病変の他に,小脳深部核を含む特定のニューロンに成人年齢に及ぶ膨化と萎縮という動的病変がみられる3)

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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