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特集 情動―喜びと恐れの脳の仕組み
扁桃体神経回路の機能制御メカニズム
著者: 湯浅茂樹1
所属機関: 1国立精神・神経センター神経研究所微細構造研究部
ページ範囲:P.3 - P.9
文献購入ページに移動 高次脳機能は大きく認知機能と情動機能に分類しうる。このうち情動は快・不快,喜怒哀楽のような,広い意味で外界からの情報に対する価値判断とそれに伴う個体の防衛的反応を引き起こす脳の活動である。この情動機能には扁桃体が中心的役割を果たしている。Urbach-Wiethe症候群は非常に稀な遺伝性の疾患で,両側の扁桃体に限局した変性が認められる。この症例では短期記憶をはじめとした認知機能や悲惨な物語に対する情動反応にはほとんど障害が認められないにもかかわらず,情動的な事象に関連した記憶が選択的に障害されていた1)。また,扁桃体に限局した梗塞や損傷のある他の疾患でも,特定の対象の認知はできるにもかかわらずヒトの表情から感情表現を読み取ることができず,情動記憶と結びついた自律神経反応が起らないことが報告されている1)。さらに,情動記憶の代表的パラダイムである恐怖条件付けの過程で,ヒトでも扁桃体活動が亢進することが非侵襲的脳機能画像解析により明らかにされている2)。このような臨床的観察から,扁桃体を中心とした神経回路が情動に関連した情報の処理,記憶と情動表出に関わると考えられており,特に恐怖や嫌悪といった感情に関連性が強い3)。
このように恐怖情動に関わる扁桃体神経回路に関連した知見は,従来自然科学的研究の対象となりにくかった感情について生物学的観点から理解する道を開くとともに,情動障害のメカニズム解明にも貢献している。本総説では扁桃体を中心とする情動神経回路の制御機構について,システムと分子細胞生物学的メカニズムの両方の視点から考察する。
このように恐怖情動に関わる扁桃体神経回路に関連した知見は,従来自然科学的研究の対象となりにくかった感情について生物学的観点から理解する道を開くとともに,情動障害のメカニズム解明にも貢献している。本総説では扁桃体を中心とする情動神経回路の制御機構について,システムと分子細胞生物学的メカニズムの両方の視点から考察する。
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