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文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻1号

2005年02月発行

文献概要

特集 情動―喜びと恐れの脳の仕組み

報酬系としてのドーパミン神経細胞と強化学習

著者: 中原裕之1

所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター脳数理研究チーム

ページ範囲:P.17 - P.25

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 本号は「情動―喜びと恐れの脳の仕組み」の特集である。その特集のもと,本章は,題目にあるようにドーパミン神経細胞の役割に焦点を当てている。もちろんその意図は,ドーパミン神経細胞が「情動」と深く関わると考えられているからである。では,どう関わるのだろうか。これは難しい。なぜならまず第一に,「情動」として観察される様々な現象は,たいていの場合,脳の様々な部位に関連し,そして,それらが互いに作用を及ぼしあった結果として現れてくるのが普通である。それゆえ,ドーパミン神経細胞の「情動」における役割は,本質的には,他の部位における神経活動に依存する。このことに留意しておくことは重要である。第二に,ドーパミン神経細胞の活動に焦点を絞って考えると,その情動における機能については諸説ある。さらには,ドーパミン神経細胞の機能は情動のみに関連するわけではなく,他の様々な生体の機能にも関連することもわかっている。つまり,「情動」として語るだけでは,ドーパミン神経細胞の生体における役割は十全には見えてこない。

 上記の二点を踏まえると,ドーパミン神経細胞は「情動のこれこれ」に関わりますと断言するのは,著者の理解する限りにおいては,現時点では難しすぎる。とはいえ,それでこの章を終わりにしてしまっては,身もふたもない。そこで,とりあえずは,(現時点で)著者が気に入っているドーパミン神経細胞の活動と情動に関わる概説論文をいくつか挙げておこう1-5)。現在の考え方の一端を知りたい方はこれらを参照されたい。これらには,ドーパミン神経細胞の情動における役割について有益な示唆が書いてある。

参考文献

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16)中原裕之:ドーパミン神経細胞と強化学習,BSIS Technical Report, No. 04-1,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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