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文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻1号

2005年02月発行

文献概要

特集 情動―喜びと恐れの脳の仕組み

アルコールと麻薬と覚せい剤

著者: 池田和隆1 山本秀子1

所属機関: 1財団法人東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所分子精神医学研究部門

ページ範囲:P.45 - P.50

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 情動は,生物が生物たる,人が人たる,個にとって根源的な機能である。記憶,学習,知覚,運動制御,予知など重要な脳機能は,コンピューターやロボットによってある程度代行させることができるが,情動の代行は不可能である。情動は,人や動物の行動を決める上で決定的な役割を担うものであるが,神秘的で科学的解明が難しいと考えられている。このような情動を科学的に研究して分子レベルで理解するためには,情動に影響する薬物の作用機序に注目することが有効であろう。アルコール,麻薬,覚せい剤などの物質は,様々な情動を惹起させるが,それ自体が分子であり,その構造も明らかである。つまり入口が分子,出口が情動であり,中がブラックボックスではあるが,脳であることは間違いない。また,これらの薬物は内在性の神経伝達物質の類似物であり,薬物がない状況下で内在性物質が作り出している自然な情動と類似した情動を作り出していると考えられる。しかも,これらの薬物は脳に無秩序に作用するわけではなく,それぞれ特異的な標的分子に作用する。薬物がどのような標的分子にどのように作用し,この標的分子が次の分子にどのように情報を伝えていくのか,その次は,その次は,と研究を進めていけば,薬物から情動に至る過程を全て分子レベルで理解することが可能かもしれない。本総説では,これらの薬物の作用機序に関する,動物行動解析結果を中心とした最近の知見を例に,快情動の分子メカニズムの一部を紹介したい。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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