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文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻2号

2005年04月発行

文献概要

特集 味覚のメカニズムに迫る

味蕾細胞間情報伝達

著者: 吉井清哲1 大坪義孝1 熊澤隆2

所属機関: 1九州工業大学大学院生命体工学研究科 2埼玉工業大学工学部応用化学科

ページ範囲:P.85 - P.89

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 なぜ味蕾という細胞集団が必要なのだろうか。魚類や数種の両生類,出産直後のほ乳類には,単独で化学受容を行う細胞,solitary chemosensory cellやこれと類似の細胞が発見されている1,2)。わざわざ味蕾を形成するからには,生物学的意義があるに違いない。近年,味蕾を形成する細胞,味蕾細胞間に相互作用のあることがわかってきた3)。本稿では,ほ乳類,特にマウス味蕾がギャップ結合および傍分泌作用によって連結された味蕾細胞ネットワーク(図1)として味応答の生成に寄与する可能性を紹介する。

 ほ乳類味蕾細胞は,形態学的にⅠ型からⅣ型までの4種に分類され,各細胞型の役割が示唆されている。Ⅰ型からⅢ型までは,味孔に向かって伸びるelongated cellで,味物質と接触する可能性をもち,Ⅰ型細胞は支持細胞,Ⅱ型は味物質受容体を持つが味神経と化学シナプスを形成しない細胞,Ⅲ型は味神経と化学シナプスを形成する細胞である。Ⅳ型細胞は他の細胞型の幹細胞あるいはprecursor cellで味蕾基底部に分布する。マウス茸状乳頭味蕾(舌前半に分布する味蕾)は~50個のelongated cellを含み,Ⅱ型が~25%,Ⅲ型が~5%,残りをⅠ型が占める。もし,Ⅱ型細胞が受容した味物質の情報を脳へ送ろうとするなら,味神経との化学シナプス以外のルートが必要となる。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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