特集 Naチャネル
骨格筋Naチャネルの遅い不活性化と遺伝性筋疾患
著者:
高橋正紀1
青池太志1
佐古田三郎1
所属機関:
1大阪大学大学院医学系研究科神経内科学
ページ範囲:P.247 - P.253
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電位依存性Naチャネルをはじめいくつかのイオンチャネルには,イオンを透過する開(open),透過しない閉(close)状態以外に,不活性化(inactivated)という状態が存在する。不活性化状態は,イオンを透過しない点では閉状態と同様だが,電位変化やアゴニストにても透過可能とはならないという点で異なる。電位依存性Naチャネルの場合,数msオーダーの脱分極で速い不活性化(fast inactivation)が生じ,活動電位の収束や不応期などの生理的現象を担っている。また,心筋・骨格筋型Naチャネルの遺伝子異常による速い不活性化の障害は,他の総説1,2)や本号の前稿にて詳述されているように,心筋ではQT延長症候群,骨格筋では高カリウム性周期性四肢麻痺や先天性パラミオトニーなどといった疾患の病態に関与することが近年明らかにされてきた。一方,数sオーダーの長い脱分極によって生じる遅い不活性化(slow inactivation)については,60年代からNarahashiによって現象の存在自体は観察されていたが,生理的意義は不明であった3)。しかし,上記疾患の研究により,遅い不活性化の病態への関与が示されたことなどから,近年かなり理解が深まった。本稿では骨格筋型Naチャネルの遅い不活性化について,生理的特性のみならず病態との関与を含め概説する。