文献詳細
特集 脳の遺伝子―どこでどのように働いているのか
オレキシンの下垂体ホルモン分泌および性周期に及ぼす役割
著者: 村田拓也1 樋口隆1
所属機関: 1福井大学医学部形態機能医科学講座統合生理
ページ範囲:P.319 - P.322
文献概要
2種類のオレキシン,オレキシンAとオレキシンBは,1998年にほぼ同時に二つのグループにより報告された1,2)。オレキシンはリガンドが同定されていない受容体(オーファン受容体)のリガンドとして分離され,摂食促進作用を示すことから,食欲という意のギリシャ語orexisを基に命名された。ほかのグループはセクレチンと相同性のある部分に注目し,視床下部由来のこのペプチドをヒポクレチン1とヒポクレチン2と命名した2)。オレキシンAとオレキシンBは,それぞれ33個と28個のアミノ酸残基からなり,分子量は3562Daと2937Daである1)。ヒポクレチンはそれぞれ39個と29個のアミノ酸残基として報告された。オレキシンAのアミノ酸配列はヒト,ウシ,ラット,マウスで同一であり,非常に保存されたペプチドである。オレキシンBはヒトとラット間では,2ヵ所異なっている。オレキシンAとオレキシンBは同じ前駆体(プレプロオレキシン)から産生され,相同性は46%である。オレキシン受容体には2種類のGタンパク結合型受容体であるオレキシン-1受容体(OX1R)とオレキシン-2受容体(OX2R)がわかっている。OX1RはオレキシンAに対する親和性がオレキシンBに対する親和性よりも高く,OX2RはオレキシンAとオレキシンBに対して同程度の親和性を持つ1)。オレキシン産生細胞は視床下部の外側,背側,そして脳弓周囲に局在し,脳の広範囲な部位に投射している。ラットでは大脳皮質,海馬,扁桃体,視床内側核,中脳水道周囲灰白質,中隔,縫線核,腹側被蓋核,青斑核,最後野,孤束核,脊髄などに投射している3)。
参考文献
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