icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻4号

2005年08月発行

文献概要

特集 脳の遺伝子―どこでどのように働いているのか

依存性薬物による脳内遺伝子群の発現調節

著者: 舩田正彦1 佐藤美緒1 青尾直也1 和田清1

所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部

ページ範囲:P.323 - P.327

文献購入ページに移動
 規制薬物および未規制薬物(脱法ドラッグ)の乱用は,若年層への拡大が表面化しており,わが国において大きな社会問題となっている。特に,覚せい剤であるメタンフェタミン(METH)の乱用は深刻化しており,METHの慢性的な使用により精神疾患を発症することが知られている。医療施設における薬物関連精神疾患に関する調査から,その発病に至る薬物としてMETHが50%程度を占め主要な原因薬物になっているのが現状である1)。こうした薬物関連精神疾患,薬物依存症の治療法の確立およびその治療薬の開発のために,依存性薬物による精神依存形成機構の解明が必要である。

 近年,薬物依存の発症機序やその病態について,脳内の遺伝子発現の変化という観点から精力的な研究がなされている。薬物依存関連遺伝子の同定は薬物依存の診断の指標となり,さらには原因遺伝子をターゲットにした遺伝子治療および新規治療薬開発への応用が可能になると予想される。薬物による遺伝子発現の変動を探索する方法として,近年開発されたDNAチップ法(マイクロアレイ法)が注目されている2,3)。マイクロアレイ法は同一条件下で多種類の遺伝子発現の解析が可能である。さらに,迅速にデータ解析ができるという特徴を有する。本法はゲノムプロジェクト後の全遺伝子情報を有効に利用するための技術として重要な役割を担っており,薬物依存形成の原因遺伝子の同定にも応用が期待できる。マイクロアレイ法を用いて,覚せい剤であるMETHの急性投与もしくはMETHの慢性投与によって変動する脳内遺伝子群の比較検討を行うことは興味深い。本稿では,現在までに行ったマイクロアレイ法を利用したMETHによる遺伝子発現の変動に関する解析結果について紹介する。

参考文献

1)尾崎 茂:臨床精神薬理 6:1169-1176,2003
97:9127-9131, 2000
84:244-252, 2003
34:320-325, 2003
5)鈴木 勉:日薬理誌 114:365-371,1999
25:192-216, 1997
51:141-153, 1998
22:7929-7941, 2002
19:9579-9586, 1999
965:55-67, 2002
66:583-591, 2001
13:1235-1244, 1994
276:29603-29610, 2001
1025:76-83, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?