文献詳細
特集 脳の遺伝子―どこでどのように働いているのか
恐怖条件づけの分子生物学―恐怖条件づけに障害を持つ前脳特異的トランスジェニックマウスの解析
著者: 児島伸彦1
所属機関: 1群馬大学大学院医学系研究科高次細胞機能学
ページ範囲:P.336 - P.344
文献概要
恐怖の対象を記憶し,その対象を見たときに恐怖反応を引き起こすのに中心的な役割を担う脳部位は大脳辺縁系に属する扁桃体(Amygdala)である。この部位を実験的に破壊したサルで起こる様々な神経症状(Klüver-Busy症候群)には,本来恐怖の対象であったものに対して何も感じなくなるという症状も含まれる。それでは扁桃体ではどのようなしくみで恐怖が恐怖と認識され,それが記憶されるのだろうか。アルバートで行われた「恐怖条件づけ」は,現在ラットやマウスの行動解析のためのテストバッテリーとして広く用いられており,しだいにそのメカニズムに関わる分子が明らかになってきている。本稿ではわれわれが作製し,いずれも恐怖条件づけテストにおいて異常が見出されたミュータントマウスの解析を中心に恐怖条件づけの分子メカニズムについて概観したい。
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