文献詳細
特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
2.酵素および酵素制御
ATPシンターゼa鎖/ATPアーゼタンパク6(MT-ATP6)
著者: 後藤雄一1
所属機関: 1国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第二部
ページ範囲:P.376 - P.377
文献概要
ヒトの病気との関連でa鎖の変異がはじめて報告されたのはT8993G変異である。Holtらにより,発達の遅れ,網膜色素変性,けいれん,失調,神経原性の筋力低下,感覚性ニューロパチーを症状とする家系で,本変異がヘテロプラスミーで見出された1)。症状の組み合わせから,Neurogenic weakness,ataxia,retinitis pigmentosa(NARP)と呼ばれ,また報告した研究者の所属していた施設名からQueens Square diseaseとも呼ばれた。その後,この変異は母系遺伝を示すLeigh脳症患者でも発見され,その場合は変異率が極めて高くほぼホモプラスミーの状態(95%以上)になっていることが判明した2)。一方,NARPの場合にはそれよりやや低い変異率であり,一家系内にNARPとLeigh脳症が混在している場合もある。
参考文献
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