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文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻5号

2005年10月発行

文献概要

特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム 2.酵素および酵素制御

O-結合マンノースβ1,2-N-アセチルグルコサミン転移酵素(POMGNT1)

著者: 萬谷博1 遠藤玉夫1

所属機関: 1財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団東京都老人総合研究所老化ゲノム機能研究チーム

ページ範囲:P.380 - P.381

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 蛋白質のセリン(Ser)あるいはスレオニン(Thr)のヒドロキシル基にマンノース(Man)が結合した糖鎖をO-Man型糖鎖という。哺乳類のO-Man型糖鎖の主要な構造として,Siaα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-2Man-Ser/Thrが報告されている1)。Protein O-mannose β1,2-N-acetylglucosaminyltransferase1(POMGnT1)はO-Man型糖鎖の生合成において,UDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)を糖供与基質としてGlcNAcをβ1-2結合でManに転移する酵素である。一方,N-結合型糖鎖の生合成過程におけるGlcNAcβ1-2Manを合成する酵素としてβ1,2-N-acetylglucosaminyltransferase-Ⅰ(GnT-Ⅰ)とGnT-Ⅱが知られており,POMGnT1はこれらとの相同性をもとにクローニングされた。しかし,GnT-Ⅰ,ⅡとPOMGnT1の糖受容基質に対する特異性は完全に異なり,GnT-Ⅰ,ⅡがO-Man型,あるいはPOMGnT1がN-結合型糖鎖の生合成酵素として機能することはできない2)

 POMGnT1は660個のアミノ酸からなり,N末側の約40アミノ酸が細胞質側,幹領域と触媒活性領域を含むC末側の大部分が管腔側に存在するⅡ型膜結合蛋白質である。POMGnT1のArg367-Gly505の領域はGnT-Ⅰの触媒活性領域との相同性が高く,POMGnT1のN末端側から298個およびC末端側から9個のアミノ酸を除いても触媒活性は保持されることから,Val299-Glu651が触媒活性領域であると考えられる3)。GnT-ⅠのX線構造解析から,触媒活性領域にある16個のアミノ酸がUDP-GlcNAcとMn2+の結合に必要であることが示されており,糖転移酵素に特徴的なD/E-X-Dモチーフがこの中に含まれている4)。これら16個のアミノ酸のうちD/E-X-Dモチーフと,触媒活性中心と予想されるアスパラギン酸残基を含む10個のアミノ酸がPOMGnT1で保存されている。また,GnT-Ⅰの触媒領域でジスルフィド結合を形成することが示されている二つのシステイン残基もPOMGnT1で保存されており,POMGnT1もGnT-Ⅰの触媒活性ポケットと同様の構造を形成するものと予想される2)

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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