特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
2.酵素および酵素制御
N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(GALNS)
著者:
祐川-早坂和子1
折居忠夫2
所属機関:
1(前)岐阜大学小児科
2岐阜大学
ページ範囲:P.396 - P.397
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ムコ多糖症IVA型(GALNS遺伝子異常症)
細胞外マトリックスの基質成分であるプロテオグリカンは,タンパク質とグリコサミノグリカン(ムコ多糖)から構成される。ムコ多糖症はグリコサミノグリカンの代謝に関わるリソソーム酵素の遺伝子異常症群である。11種類の酵素の遺伝子異常が認められている。ムコ多糖症IVA型は,コンドロイチン6硫酸やケラタン硫酸を分解するN-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(GALNS)の遺伝子異常症である。常染色体劣性遺伝形式をとり,発症頻度は10万-15万人に1人と推定されている。臨床症状は骨変形を主徴とし,低身長,X脚,角膜混濁,難聴などの症状が認められる。知能は正常である。症状の重度に違いがあり,重症型と軽症型そして程度は様々であるがその中間型に位置する症例が存在する。筆者らは1991-1994年にGALNSのcDNA,ゲノム遺伝子,染色体座位(16q24)を報告し1-3),続いて本症の遺伝子上の変異を明らかにしてきた4-6)。現在までに約100種類の変異が同定されているが,その内の約80%は点変異であった。