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文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻5号

2005年10月発行

文献概要

特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム 4.受容体

ノッチNotch(NOTCH)

著者: 吉崎嘉一1 高橋慶吉1

所属機関: 1国立長寿医療センター血管性痴呆研究部

ページ範囲:P.412 - P.413

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 Notchファミリーは1回膜貫通型の糖タンパク質受容体分子であり,その名前の由来はショウジョウバエの翅先端部がV字型に欠損(Notch)する遺伝座位として同定されたことによる1,2)。Notchはショウジョウバエのほかに線虫などの無脊椎動物をはじめ,ヒトやマウス,ニワトリ,カエル,ゼブラフィッシュなどの脊椎動物にも保存されており,その活性化には2種類のリガンド,DeltaおよびSerrate(哺乳類ではJagged)が関与する。Notchの機能に関してはショウジョウバエの神経細胞の分化課程がもっとも知られている。ショウジョウバエの神経芽細胞は腹側の表皮前駆細胞群の一部から分化するが,Notchの欠失では全て前駆細胞が神経細胞へと分化し,また,Notchの過剰発現変異体では全ての細胞が表皮細胞へと分化して両者とも致死となる。従って,Notchは細胞間相互作用を介して細胞の発生運命を決定する重要なシグナルと考えられる。

 Notchは現在までに,ヒト,マウスにおいて4種類(Notch1-4)が知られており,それぞれ約50%程度の相同性が認められている。これらの4種類Notchの役割・発現は不明な点が多いが,Notch1はおもに神経細胞や造血細胞の分化を,Notch2はグリア系細胞の増殖に関係していることが報告されている。また,Notch1およびNotch2ノックアウトマウスは中胚葉分節(somite)形成異常により致死となるが3),Notch3およびNotch4ノックアウトマウスでは発生や形態的異常は認められず正常である。従って,Notch1およびNotch2は胚発生に重要な働きを担っていると考えられる。4種類のNotchとも同じリガンドでシグナル伝達が活性化されることから,発現の時期や局在がその機能に深く関係している可能性がある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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