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文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻5号

2005年10月発行

文献概要

特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム 4.受容体

腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー11a(TNFRSF11A)

著者: 塩井淳1 西沢良記2

所属機関: 1大阪市立大学大学院医学研究科老年血管病態学 2大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学

ページ範囲:P.420 - P.421

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 TNFRSF11Aは腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの一員であり,RANK(receptor activator of NF-κB)あるいはTRANCE-R(TNF-related activation-induced cytokine receptor)とも呼ばれている(以下の記述ではRANKとする)1-3)。RANKのリガンドはRANKL(RANK ligand)であり,TRANCE,OPGL(osteoprotegerin ligand),ODF(osteoclast differentiation factor)とも呼ばれている。RANKはほかの腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーと同様に,細胞外領域に4個のシステインに富む繰り返し配列(cysteine-rich domain)を有する1型膜結合蛋白質であり,616個のアミノ酸からなっている。RANK mRNAの発現は種々の組織および細胞株などで認められるが,細胞膜表面におけるRANK蛋白の発現は脾臓,リンパ節,樹状細胞,活性化T細胞,破骨細胞およびその前駆細胞などに限られている。三量体化したRANKLがRANKに結合すると,RANKも三量体となり,下流にシグナルを伝えるものと考えられている。RANKL-RANK系のおもな機能は破骨細胞の分化誘導およびその活性化,樹状細胞の分化・成熟,樹状細胞とT細胞の相互作用などである。RANKのノックアウトマウスは破骨細胞の分化が障害され,骨大理石病を示すとともにリンパ節の器官形成が全く認められない4)

 RANKのシグナル伝達機構にはTNF receptor-associated factor(TRAF)と呼ばれるアダプター蛋白質が重要な役割を果たしている2,3)。RANKの細胞内ドメインにはTRAFの結合部位が少なくとも3ヵ所存在し,6種類のTRAFファミリー(TRAF1,TRAF2,TRAF3,TRAF4,TRAF5,TRAF6)のうち,TRAF4を除くすべての因子がRANKに結合しうることが明らかにされている。これらのTRAFファミリーのうちTRAF2,TRAF5,TRAF6はNF-κB(nuclear factor-κB)およびJNK(c-jun N-terminal kinase)を活性化する機能を有している。RANKの細胞内ドメインには,これら三つのTRAFと結合する部位(TRAF-interacting motif:TIM)が同定されている。TRAF6結合領域はもっとも膜に近い側に存在し,特異性が高い。そのC端側にTRAF2,TRAF5の順にそれぞれの結合領域が存在している。TRAF2およびTRAF6のN端側に存在するRING-zinc finger(RZF)ドメインがIKK(I-κB kinase),JNK,p38 kinaseを活性化することが明らかにされている。これら三つのTRAFのうちでTRAF6を介するシグナル伝達経路が破骨細胞の分化にもっとも重要と考えられている。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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