文献詳細
文献概要
特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム 5.輸送系
ミクロソームトリグリセライド運搬タンパク(MTP)
著者: 西原利治1 戸田勝己2 大西三朗1
所属機関: 1高知大学医学部消化器病態学 2高知大学医学部遺伝子病態制御学
ページ範囲:P.438 - P.439
文献購入ページに移動アポリポ蛋白Bを含むリポ蛋白に中性脂肪を付加する機能を持つMTPは,同一分子が腸管の上皮と肝細胞のミクロソームに主に局在する1)。腸管から吸収された中性脂肪は,アポリポ蛋白Bと腸管上皮細胞内で結合してカイロミクロンとなり,胸管を経て血中に放出される。他方,腸管から吸収された糖は門脈を経て肝臓に至り,一部はグリコーゲンとして肝細胞に貯蔵される。残りの大部分の糖は肝細胞内で脂肪酸や中性脂肪に変換される。細胞内で過剰となった中性脂肪は,オレイン酸などの刺激によりさらに発現が高まったMTPの働きで効率よくアポリポ蛋白Bに結合し,VLDL(very low density lipoprotein)として肝静脈に放出される2)(図1)。過食や高脂肪食が続くとこの二つの経路の働きが亢進し,食後高中性脂肪血症やインスリン抵抗性が誘発される。肥満とインスリン抵抗性はメタボリックシンドロームの重要な誘因なので,過食や高脂肪食が身に付いた当今,高中性脂肪血症に対するMTP阻害薬の活躍が期待される。
参考文献
掲載誌情報