icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻5号

2005年10月発行

文献概要

特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム 8.ペルオキシソーム・リソソーム

ペルオキシソーム形成因子14(PEX14)

著者: 下澤伸行1

所属機関: 1岐阜大学生命科学総合研究支援センターゲノム研究分野

ページ範囲:P.470 - P.471

文献購入ページに移動
ペルオキシソームとペルオキシソーム病

 ヒトの細胞には核以外にミトコンドリア,ペルオキシソーム,小胞体,ゴルジ体,リソソームなどの細胞内小器官(オルガネラ)が存在し,タンパク質はリボソーム上で合成された後に細胞内を直接,または小胞体を介してオルガネラに輸送されてその機能を発揮している。そのうちの一つであるペルオキシソームには50以上のマトリックスタンパクがリボソームより直接輸送されて,脂肪酸β酸化やエーテルリン脂質,胆汁酸の生合成など多くの生理的機能を果たしている。近年,先天性の代謝異常症を細胞内小器官ごとに分類するオルガネラ病という概念が提唱され,ペルオキシソーム病はペルオキシソームの代謝機能に異常をきたして発症する疾患群で,その特筆すべき点として単一のタンパク異常症以外に,これらタンパクのペルオキシソームへの輸送やペルオキシソーム膜形成の異常によりペルオキシソームの生合成そのものが障害されるペルオキシソーム欠損症の存在が挙げられる。

 そのペルオキシソーム生合成に関わるタンパクをperoxinと呼び,遺伝子群はPEXと表記される。PEX遺伝子のクローニングにはペルオキシソームの生合成機構が真核細胞に広く保存されていることより,酵母や動物変異細胞(CHO細胞)などを用いて精力的に展開されている。前者は欧米を中心に複数のグループから異なる酵母の系で数多くの変異株が分離され,その異常を相補するPEX遺伝子もクローニングされており,CHO変異細胞の系では国内において藤木らのグループを中心にラットやヒトのcDNAライブラリーを用いてクローニングされている。さらに酵母の系からはヒトDNAデータベースを用いたホモログクローニング(EST法)によりヒトのPEX遺伝子もクローニングされている。各PEX遺伝子産物(peroxin)の機能についても解明されてきており,ペルオキシソームマトリックスタンパクの輸送に関わるperoxinとしては,タンパクのペルオキシソーム輸送シグナル(PTS1とPTS2)を認識するPex5やPex7,膜の透過に関わるPex13,14,RINGファミリー(Pex2,10,12),さらにAAA ATPaseファミリーに属するPex1や6,両者の複合体のリクルート因子であるPex26(次項参照)などが挙げられる。一方,ペルオキシソーム膜形成に関わるperoxinとしてはPex3,16,19がクローニングされている。そしてこれらPEX遺伝子のクローニングにより,次に述べるペルオキシソーム欠損症の各相補性群の病因遺伝子が次々と明らかにされている。

参考文献

23:552-558, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?