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文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻5号

2005年10月発行

文献概要

特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム 11.細胞外タンパク

アポリポプロテインH/β-2-糖タンパクI前駆体(APOH/B2GPI)

著者: 武城英明1

所属機関: 1千葉大学大学院医学研究院臨床遺伝子応用医学

ページ範囲:P.492 - P.493

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 β-2-糖タンパクI前駆体(β2GPI)は,分子量42kDaの血漿を循環する326個のアミノ酸よりなる単鎖の糖タンパク質であり,血中では約200μg/mlの濃度で存在する。補体を制御するタンパクの一つであり,血液中では単独に加えリポタンパクの構成成分としても存在することから,アポリポプロテインHとしても知られる。APOH/B2GPI遺伝子は17番染色体q23-qterに位置し,それから転写されるmRNAは約1.5kbの長さとなる。おもなタンパクがつくられる臓器は肝臓であり,シグナルペプチドが切断された成熟タンパクは,大きく5個のドメインに分かれ,N端からの4個の繰り返し領域(各60アミノ酸程度)は,complement control protein module(CCP)またはSushi domainと呼ばれ,それぞれの領域に2個のジスルフィド結合を有する。C端の第Ⅴドメインはこれらと異なり分子の表面に位置し,1個のジスルフィド結合を有する。そしてこの第Ⅴドメインが切断(clip)を受けることにより,APOH/β2GPIの作用が制御されると考えられる。

 これまでに,APOH/β2GPIは血小板の凝集反応や血液凝固反応に抑制的に作用することが知られている。これは,血小板の細胞膜に存在するホスファチジルリジンが細胞表面上に露呈し,APOH/β2GPIと結合することに起因すると考えられている。第Ⅴドメインはいくつかのリガンドとの結合に重要であり,実際にAPOH/β2GPIは陰性荷電を有するホスファチジルリジン,ヘパリンや第Ⅺ因子などと結合する。このリン脂質や凝固因子との結合が様々な生理的および病的機能を有すると考えられる。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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