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特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム 13.細胞増殖
ネクディンnecdin(NDN)
著者: 吉川和明1
所属機関: 1大阪大学蛋白質研究所神経発生制御研究室
ページ範囲:P.506 - P.507
文献購入ページに移動 necdin(neurally differentiated embryonal carcinoma-derived protein)は,マウス胚性ガン細胞を神経分化させた際に発現する遺伝子産物として発見された1)。マウスとヒトのnecdinは,それぞれ325個と321個のアミノ酸残基からなる2)。necdin mRNAは中枢および末梢神経系の大部分のニューロンで発現しているが,神経幹細胞,ニューロン前駆細胞,グリア細胞には発現が認められない。necdinはニューロン以外にも筋細胞や脂肪細胞などが最終分化する際にも発現する。necdin cDNAを増殖性細胞に導入すると,細胞分裂が強く抑制される3-5)。また,培養した知覚神経節ニューロンにおいて内在性necdinの発現を抑制すると,分化できずにアポトーシスを起こす6)。したがって,necdinはニューロンの細胞増殖抑制とともに,分化状態の安定化にも関わるものと推定される。
necdinは細胞増殖に関連するタンパク質,たとえば,ガンウイルス由来のSV40 large T抗原やアデノウイルスE1A,あるいは転写因子E2F1やE2F4と結合する4,7)。この結合特性はガン抑制遺伝子産物レチノブラストーマタンパク質の特性と一致する。また,necdinはガン抑制遺伝子産物p53とも結合して転写活性を抑制する5)。E2F1やp53は分化ニューロンに対しては死(アポトーシス)を誘発するため,necdinは両者を抑制することによりニューロン死を防ぐ役割を果たすものと推定される。さらに,necdinはニューロンにおいて神経栄養因子受容体を介する生存と死の細胞内シグナルを制御しているものと考えられる8)。また,necdinはMsx/Dlxホメオドメインタンパク質とも複合体をつくり,ニューロンや筋細胞などの最終分化を制御している可能性もある9)。
necdinは細胞増殖に関連するタンパク質,たとえば,ガンウイルス由来のSV40 large T抗原やアデノウイルスE1A,あるいは転写因子E2F1やE2F4と結合する4,7)。この結合特性はガン抑制遺伝子産物レチノブラストーマタンパク質の特性と一致する。また,necdinはガン抑制遺伝子産物p53とも結合して転写活性を抑制する5)。E2F1やp53は分化ニューロンに対しては死(アポトーシス)を誘発するため,necdinは両者を抑制することによりニューロン死を防ぐ役割を果たすものと推定される。さらに,necdinはニューロンにおいて神経栄養因子受容体を介する生存と死の細胞内シグナルを制御しているものと考えられる8)。また,necdinはMsx/Dlxホメオドメインタンパク質とも複合体をつくり,ニューロンや筋細胞などの最終分化を制御している可能性もある9)。
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