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特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム 14.血管系
Vascular endothelial growth factor(VEGF)
著者: 粟田卓也1 片山茂裕1
所属機関: 1埼玉医科大学内科学内分泌・糖尿病内科部門
ページ範囲:P.510 - P.511
文献購入ページに移動VEGF(vascular endothelial growth factor)は,1989年に血管内皮細胞に特異的に働く増殖因子として単離されたが,ほぼ同時期に別のグループにより同定された血管透過性因子(vascular permeability factor;VPF)と同一であることが判明した。ヒトVEGF遺伝子は第6番染色体短腕のHLA遺伝子領域に近接して存在し(6p12),8個のエクソンで構成されている1)。VEGFは安定した二量体を形成する糖タンパクで,シグナルペプチドを持ち,細胞外に分泌される。スプライシングの違いによりアイソフォーム(VEGF121,VEGF145,VEGF165,VEGF189,VEGF206)が存在し,VEGF165が最も豊富に発現する。
VEGFは上皮系細胞から間葉系細胞までさまざまな種類の細胞に発現し,基本的にはパラクリンで血管内皮細胞に作用する。VEGFは特異的受容体として,VEGFR-1(Flt-1),VEGFR-2(KDR/Flk-1)を利用する。VEGFの発現は種々の増殖因子(TGF-β,インスリン,IGF-1など),エストロゲン,低グルコースなどによって誘導されるが,特に低酸素に反応して発現が誘導されるのが特徴である。VEGF遺伝子の上流には,低酸素反応エレメント(hypoxia-response element;HRE)という配列があり,低酸素の時は転写因子HIF-1(hypoxia-inducible factor-1)が結合する2)。
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