文献詳細
特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
15.神経系
タウ/Microtubule-associated protein tau(MAPT/MTBT1/TAU)
著者: 小林克治1 越野好文1
所属機関: 1金沢大学大学院医学系研究科脳情報病態学(神経精神医学)
ページ範囲:P.519 - P.521
文献概要
タウの遺伝子は17番染色体短腕21にあり,16のエクソンからなる。その発現はmRNAの選択的スプライシングにより発達段階で変化する。成人では6種類の分子種(isoform)(図1)が発現する。すなわち,エクソン2(2+),3(3+),10(10+)の組み合わせから6種類が形成され,352から441個のアミノ酸連鎖で構成される。また末梢神経系ではエクソン4A,6,8があり,もっとも長いアミノ酸連鎖を持ち,ビックタウとして知られる。分子種は六つあることから,65-50kDaの六つの異なったペプタイドが発生し,SDS-PAGEゲルで区別され,リン酸化に伴いSDS-PAGE上でのタウの運動性は低下する。上記の6種類の分子種において,エクソン10の有無により,タンデムリピートが三つのもの(3-repeat:3R)と四つのもの(4-repeat:4R)が区別される。微小管結合部位はC末端側のドメインにあり(図2),エクソン10は四つの微小管結合部位の2番目に位置しており,エクソン10を含む分子種は4R,含まない分子種は3Rとなる。ウエスタンブロットでタウの分子量とリピート数の関連が調べられ,55kDは3R,74kDは4R,69kDと64kDは3Rと4Rのハイブリッドであることがわかっている。タウはリン酸化を受けやすく,リン酸化を受けたタウはチューブリンをつなぐ働きをせず,ほかの微小管付随蛋白を微小管からはがし,またタウ蛋白同士で重合し,細胞骨格蛋白としての働きを失う。リン酸化にはMAPK,GSK3b,PKAなどのカイネース(kinase)が働き,リン酸化部位が同定されている。
参考文献
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