文献詳細
文献概要
特集 構造生物学の現在と今後の展開
結晶構造を解明してから始まる生理学の新しい展開―トロポニン・トロポミオシン・アクチンによるカルシウム調節メカニズムの研究
著者: 前田雄一郎1
所属機関: 1理化学研究所播磨SPring-8センター構造生物化学研究室
ページ範囲:P.556 - P.563
文献購入ページに移動江橋らはカルシウム説のひとつの重要な結論として,筋肉の細いフィラメント(以下ではアクチンフィラメント複合体と呼ぶ)の分子模型(図1下図)を提案した。アクチン重合体上に周期的にTmとTnが結合している。Ca2+はTnに結合し,その信号はTmを経てアクチンフィラメント全体に伝搬し,ミオシンとの滑り運動が始まって張力が発生する。アクチンフィラメント複合体は収縮力を発生するモーターの一部であると同時にスイッチでもある。分子配置の美しい周期性はTn/Tm/アクチン=1:1:7という分子の存在比に対応する。しかし,アクチンフィラメント複合体によるカルシウム調節のメカニズムを理解するには分子模型では不十分であって,原子模型すなわち原子座標の精度の構造を解明する必要がある。
参考文献
掲載誌情報