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文献詳細

雑誌文献

生体の科学56巻6号

2005年12月発行

文献概要

特集 構造生物学の現在と今後の展開

NMR分光法とクライオ電子顕微鏡法によるアクチンフィラメント研究―筋肉収縮・弛緩における分子スイッチ機構

著者: 若林健之1 村上健次1

所属機関: 1帝京大学理工学部バイオサイエンス学科

ページ範囲:P.593 - P.605

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 骨格筋と心筋では,細胞内カルシウム濃度が1μMを越えるとアクチンを主体とする“細いフィラメント”と“太いフィラメント”を構成するミオシンとの相互作用が活性化され1),二種類のフィラメントは滑りあって筋収縮が生じる。カルシウムイオンの標的は細いフィラメントに組み込まれたトロポニンであり,カルシウムによるトロポニンの構造変化は収縮制御のスイッチのトリガーとなる。この変化はトロポミオシンを介してアクチンに伝達される。

 トロポニンは三つのコンポーネントからなっている。TnT(Tropomyosin-binding)はトロポミオシンと結合し,TnC(Calcium-binding)はカルシウムを結合し,TnI(Inhibitory)はアクチンと結合して収縮を阻害する。カルシウムを結合したTnCはTnIと強く結合し,TnIの阻害活性を喪失させる。TnCとCa2+の結合は結晶解析やNMR分光法により原子レベルで詳しく研究されてきた。しかし,筋弛緩の分子機構を明らかにする上で重要なTnIとアクチンの結合の原子レベルでの詳細は不詳であった。本稿では主にこの点について述べたい。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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