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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻1号

2006年02月発行

文献概要

特集 こころと脳:とらえがたいものを科学する

脳機能マッピングによる言語処理機構の解明

著者: 酒井邦嘉1

所属機関: 1東京大学大学院総合文化研究科相関基礎科学系

ページ範囲:P.30 - P.36

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 言語は人間に固有の高次脳機能である。言語学者のチョムスキーは,言語獲得の生得的なメカニズムもまた,人間に固有のものであると主張したが,これまで実験的な検証は困難であった。「普遍文法」に基づく言語情報処理について,言語学ではさまざまな言語のデータを普遍的に説明することができる理論が提出されてきた。しかしながら,これらの理論が,脳の言語機能の核心的なメカニズムとして支持され得るかどうかは,まだよくわかっていない。失語症が言語に特異的な脳障害であると認めることができれば,いくらか議論は前進するかもしれないのだが,失語症さえも短期記憶の障害の一様式とみなそうとする反対意見が根強いことからして,言語の領域固有性を実証することは,必要不可欠な課題となっている。その意味で,こうした言語に特異的な問題は,脳科学における究極の挑戦であるといえる1)。本稿では,脳機能マッピング技術の進歩によって可能になった言語処理機構に関する最新の知見を紹介し,言語獲得の過程において文法中枢の機能が変化するという新しい仮説2)について述べる。

参考文献

1)酒井邦嘉:言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか,中公新書,東京,2002
310:815-819, 2005
298:1569-1579, 2002
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20:578-586, 2003
128:1407-1417, 2005
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19:3050-3056, 1999
37:159-170, 2003
14:1233-1239, 2004
25:1637-1644, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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