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特集 こころと脳:とらえがたいものを科学する
概念の発達と操作の神経機構―ヒト思考形式の非論理バイアスによる概念創発
著者: 山崎由美子1 日原さやか1 藤井直敬1 岡ノ谷一夫2 入來篤史1
所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター象徴概念発達研究チーム 2理化学研究所脳科学総合研究センター生物言語研究チーム
ページ範囲:P.51 - P.57
文献購入ページに移動しかし,ヒトの概念作用は,上述のように現実に目の前に存在する数々の事象を単に弁別することによってカテゴリー化するのみではない。その本質的な機能は,直接的には存在しない「性質」や「関係性」といった抽象的な『概念』事象を先験的に規定して,それに適合する現実の要素を枚挙するといった思考形式にある。例えば「何も存在しない」という『零』や『空』といった概念である。人類が“0”の発見にいかに苦心し,できてみればそれがいかに有用であったかを思い起こせば,この抽象的概念作用の意義がわかるだろう。概念作用には,このように「仮説性」「空想性」や「蓋然性」などへの先験的な「気づき」の創発が必須である。これはヒト脳に特異的な機能であるかもしれない。
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