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文献詳細

雑誌文献

生体の科学57巻2号

2006年04月発行

文献概要

特集 膜リサイクリング

分泌顆粒のエキソサイトーシス

著者: 泉哲郎1

所属機関: 1群馬大学生体調節研究所遺伝生化学分野

ページ範囲:P.96 - P.101

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1 分泌顆粒とは

 多細胞生物が統合的に機能するためには,分化細胞間の細胞間連絡が必要となる。特に物理的に離れた細胞間の相互作用では,生理活性物質を細胞外に分泌して,血液などを介してその情報を離れた細胞に伝達することが,主要な手段となる。この際,情報となる生理活性物質は,分泌刺激の強度に応じて,必要とされる濃度と速度で分泌されなければならない。生理活性物質の作用が,食事摂取量(体重)の調節,組織の成長といったタイムスケールの長い場合,数時間以上かかる,生合成に応じた分泌(構成性分泌)でも十分に対応できる。しかし食物の消化,血糖値の調節,心拍数・呼吸数の制御,さらには運動の開始など,より速い反応を必要とする場合は,刺激に応じて分泌物質を合成するのではとても間に合わない。そこであらかじめ生理活性物質を細胞内に貯留して,必要時に必要量を迅速に分泌する,調節性分泌経路が進化したと考えられる。

 分泌物質を細胞内に貯留する器官は分泌小胞と総称されるが,このうち直径150-400nmくらいで,中心に電子密度の高いコア部分,まわりに低いハロ部分があるものを(有芯)分泌顆粒と呼ぶ。この言葉は,主として神経シナプスなどに存在する,直径50nmくらいの電子密度の低い小胞と区別するために用いられる。シナプス小胞は,グルタミン酸などの低分子を貯留し,核から遠く離れた神経線維の先端でリサイクルされる。すなわちその内容物は,閉区間であるシナプス間隙からの再吸収や細胞質での合成でまかなわれ,小胞膜もエンドサイトーシスにより再利用される。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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